
不妊症の定義は、2年間夫婦生活を営んでいても、妊娠しないこととされています。
しかし多くの国では1年間妊娠しない場合に不妊症と定義しております。
累積妊娠率というものがあり、100組の夫婦がいると、
最初の一年で80組が妊娠し、次の一年で10組が妊娠します。
最初の1年の間に妊娠される割合が多いということですね。

したがって1年避妊をしていないにもかかわらず、恵まれない場合は病院で検査をされると良いでしょう。(検査の中には、子宮卵管造影検査といって検査後数カ月は妊娠しやすくなるという検査もあります)
しかし状況によってその期間は変わると思います。もしあなたが20代であればもう少し様子を見てもいいと思いますが、30代半ば過ぎ、若しくは早く子どもが欲しいという場合には、早めに受診するとよいでしょう。
結果次第では現状のままでは厳しいという可能性もあります。
限りある時間をいたずらに費やしてしまうことは避けねばなりません。
また、その検査がどのような結果であったかで、鍼灸治療が適応かどうか、更に有効であるかという事を把握できるからです。
例えば、卵管両側閉塞や卵管水腫や子宮の形態などは不適応となります。
卵管が詰まっているにもかかわらず妊娠した例はありますが、
まずは基礎検査の結果がどうであったかということが、今後の治療に関してとても重要になります。

患者様の中にはいきなり病院に行くのは抵抗がある、又は昔かかったことはあったが、身体づくりも並行して鍼灸治療を受けられる方もおられます。
まだ病院に抵抗のあるという場合は、詳しく教えてもらえる治療院などで色々と教えてもらうのもいいかもしれませんね。
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鍼灸治療が効果的な時期
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1周期の中で、効果的な鍼灸をする時期は低温期だと考えております。
排卵してしまったら卵子に対するアプローチはできなくなるからです(根本からアプローチするためには、生理周期)。
例えば、黄体機能不全の場合、高温期に鍼灸をしても効果は薄いでしょう。卵胞が黄体になり、そこからプロゲステロンが出るため、低温期からの治療が欠かせません。
病院でもクロミッドなどを黄体機能不全の治療で用いることがありますが、良い卵胞を育てるためです。
着床期と排卵期はどちらかしか来られない場合、どちらの方がより効果的か質問をされることがあります。
私は着床までにお身体をつくることが重要だと考えておりますので、排卵前をお勧めしております。
※PMSや生理痛の強い方は、生理前と生理中の鍼灸治療を行う事により、症状の緩和を図ります。
そのような状態を改善した方が、妊娠しやすいお身体になりやすくなります。 |
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@.充分な精子が膣内に射出されること (男性因子)
A.精子が子宮頚管を通過し、子宮内へ侵入すること (子宮頚管の問題)
B.卵管を通り、卵管の先で卵子と出会う (卵管の問題)
C.卵巣において、順調に卵胞が育ち成熟した卵子が排卵される (ホルモンや卵巣の問題)
D.卵管采が排卵された卵子をキャッチする (ピックアップ機能の問題)
E.精子と卵子が出会い受精する (卵子の問題)
F.受精卵が分割する (精子・卵子の問題)
G.胚が子宮内膜へ着床する (受精卵・子宮内膜の問題)

以上のプロセスを経て妊娠に至ります。
このうちどこかに原因があると妊娠に至りません。

1年間避妊をしない場合の妊娠率は80%。
2年間避妊をしない場合の妊娠率は90%。
日本では不妊症の定義は2年妊娠を希望してもできない場合をいいますが、
海外では1年と定めている国もあります。

まったく正常なカップルでも1周期あたりの妊娠率は20%〜どんなに良くても30%。
累積妊娠率といって、100組のカップルが1周期に妊娠する確率が20%(今回は20%で計算します)。[20/100組が妊娠]
次の月は残り80組のうちの20%に当たる16組が妊娠します。[36/100組が妊娠]
3カ月目には、残り64組のうちの20%に当たる13組が妊娠 [49/100組が妊娠]・・・
と計算していくと、1年で90組以上が妊娠する計算になります。
20%で計算しましたが年齢や原因によりこの数値はガクッと減るので、状況に応じた対応が必要です。

先ほど出てきた避妊の期間によって検査をする必要が出てくるというのは、
1年経っても妊娠しない場合に、何か原因となることが考えられるかもしれないので
一般的には検査を考えるわけです。
もちろん患者さまそれぞれの背景や年齢、ご希望があるので
それをうかがったうえ、適切な情報提供、今後考えられること、鍼灸治療で期待できることをお話しさせて頂きます。

さきほどのカッコ内のものが不妊症の原因になります。
順にみていきましょう。(男性因子は省きます)

頚管粘液(おりもの)の質が悪い
抗精子抗体(ファーストチョイスは人工授精)
主な検査:頚管粘液検査、フーナーテスト、血液検査

卵管閉塞
卵管狭窄
卵管水腫
ピックアップ障害
主な検査:子宮卵管造影検査(HSG)、通気・通水テスト (ピックアップ障害は検査法なし)
卵管の両側の閉塞については鍼灸治療は不適応と考えます。器質的な問題のため閉塞や水腫に対しては体外受精が効果的だと考えます。
片側だけの問題であればもちろん鍼灸治療適応です。
閉塞側の卵巣からの排卵でも、逆の卵管采が卵をキャッチしにいくと考えられているので、妊娠の可能性はあります。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
高プロラクチン障害
卵巣機能不全
卵子の質
黄体機能不全
甲状腺機能低下症
甲状腺機能亢進症
主な検査:血液検査、超音波検査(プローブ)

子宮内膜が薄い
子宮筋腫
子宮内膜症
主な検査:血液検査、超音波検査(プローブ)、子宮鏡検査


ピックアップ障害、受精障害、卵の質、着床障害などが考えられます。
これらはお腹の中での出来事のため、直接目で見て確認ができません。
何も原因のない場合に、これらの原因が推測されます。
体外受精することで、結果的にわかることもあります。
原因が不明の場合でも鍼灸治療の適応と考えております。

西洋医学的に卵管や子宮の物理的な原因でなければ
東洋医学的に
「身体を構成する物質が、どこで(五臓六腑)、なぜ(病理)、どうなったか(症状)」
という治療が奏功すると考えます。
また、生活習慣もおうかがいし、
あなたに合った家でできるアドバイスやお灸指導などのお話もいたします。
まだまだできることはあるかもしれません。
妊娠〜出産に向け、意味のある治療やお話を提供いたします。
質問・ご相談等は03-6276-5299までどうぞ。
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